薬剤師コラム Vol.5
オンライン服薬指導があたり前の時代は来るのでしょうか

 コロナの影響により患者の受療行動へ何らかの変化があったことは間違ありません。代表的なものとして受診控え、受診間隔の長期化、受診医療機関の変更などが挙げられます。医療機関側の対応も変化しており、緊急性がない検査の延期、発熱患者の受け入れ対応、オンライン診療の実施等が行われています。当然、その変化は薬局側にも起きました。特に患者の薬局選択に関する意識変化は気になるところです。そのような状況下でオンライン服薬指導はどの程度普及するのでしょうか。

オンライン診療を利用してみた

 私が初めてオンライン診療を利用したのは、コロナ禍で自身が濃厚接触者の濃厚接触者になった時です。よくある話ですね。たまたま定期的な受診と重なったため、クリニックへ疑いが晴れるまで受診を控えた方がよいか相談したところ、オンライン診療を勧められました。職業柄オンライン診療には関心がありました。なぜなら、オンライン服薬指導を導入すべきか、世の中の薬局が迷っていた頃、まだ私が薬局で仕事をしていた時にオンライン服薬指導のシステムを積極的に導入した経験があるからです。

 話しは戻りますが、オンライン診療は自宅で受診し、指定された日時より30分程度遅れて医師からスマートフォンのビデオ通話で着信がありました。30分の待ち時間も仕事をしていたため、待ち時間は全く苦ではありませんでした。いざオンラインでの診療がはじまると、思った以上に医師との会話が弾み、対面では聞きにくいことが、オンラインだと聞きやすい内容もありました。逆にオンラインでは聞きにくく、対面の方が良いと思う場面もありました。5分ほどの受診も無事に終わり、医療事務の方へまわされ、薬局へ処方箋をFAXし、処方箋原本を郵送してもらう手続きに入り、自分が普段利用している薬局名と住所、FAX番号を伝えました。会計は後日でした。

 実際に利用してみて、無駄な待ち時間を無くすことができることは想像していた以上に大きなメリットを感じました。加えて受診するためにクリニックへ行く必要もなく、とにかく受診に要する時間を数時間も減らせることは忙しいビジネスマンの方などにとっては最大のメリットかもしれない。私自身、医療に携わりながらも次回以降も利用したいと思いました。

オンライン服薬指導の利用者像

 2回目に利用したのは、子育て中の妻が外出することになり、私が子供の面倒を見る必要が生じ、そのためにはクリニックの受診をオンラインへ切り替えてもらうしか方法がなかった時です。オンライン服薬指導のターゲットは会社員や子育て中の母親と理解していたが、今回の経験で子育てをしていると病院にも通いにくいということがよく理解できました。特にコロナ禍でマスクをできない子供を持つ親はなおさらです。また大病院を受診しているとコロナの影響もあり、オンライン診療が思った以上に多いことにも気付かされました。

オンライン服薬指導の拡がりは?

 さてここまで読まれて、何かお気づきの点をお持ちの方は多いと思います。そうです。オンライン服薬指導の体験談がありません。実は自宅近くの薬局がかかりつけのため、当日薬をもらいに行ってしまいました。このことがオンライン服薬指導の可能性を左右する要因の一つだと思います。病院や診療所はかならず決まったところ、もしくはこの病院に受診するしかないという理由が存在しています。

 一方、薬局は送料をかけてまでオンライン服薬指導にするべきか迷ってしまう。また薬は大切なものだから対面でもらいたいという意識もあるかもしれません。多くの薬局はかかりつけ薬局を目指し、近隣にお住まいの方に利用していただくための施策を講じていると思います。この「オンライン服薬指導」と「かかりつけ薬局」という相性が少々悪いような気がしています。ただ一方で薬局に薬を取りに行く手間を考える方も多いと思います。オンライン診療を受けるようなターゲット患者さんはOne-stopのサービスを求めているはずです。

 そうなると「送料」と「薬の品質保証」をあらかじめそのような患者さんに伝えておく必要があります。受診から服薬指導まで患者さんがOne-stopで完了させたいと思い、薬の品質が保証される妥当な送料とは何なのでしょうか。メーカーが食品を発売するときに値付けをする仕組みがあります。その際高すぎると売れないのは当然だが、安すぎても不安が生じ購買意欲に結びつきません。そう考えると、どのような方法で送付し、いつ届くのか、そして送料は○○○円かかります、という保険外のサービスを納得させられることができるか、加えて服薬指導する時間の設定が患者の希望するような時間帯になることがKeyになるのではないでしょうか。要は一部負担金の支払いまで含めて、患者が処方箋を持って薬局へ行くよりも利用しやすいシステムであることが求められるのではないでしょうか。

 先日、オンライン診療のサービスを提供している会社が、普及へ向けた啓発のTVCMを流していました。このTVCMは医師や患者のこころをどの程度動かすのでしょうか?TVCMで思い出すのが、ジェネリック医薬品の普及に関する啓発活動です。ジェネリック医薬品の普及に大きく貢献したのは間違いなく、薬の専門家である薬剤師が患者へ丁寧にジェネリック医薬品のメリットやブランド品との比較を説明してきたからですが、ジェネリック医薬品という言葉が広く知られたのはジェネリック医薬品メーカーのTVCMを使用した啓発活動です。

 今後、オンライン服薬指導の啓発型TVCMが増え、薬剤師が患者へオンライン服薬指導でもサービス品質は落ちないこと及びOne-stopのメリットを訴求できれば、遠くない将来に普及するかもしれません。オンライン服薬指導の体験が得られれば、オンライン服薬指導でも問題ない患者はリピートする可能性は高いと思われます。さらに電子処方箋の普及もオンライン服薬指導とは相性が良いでしょう。また一部報道でアマゾンが電子処方箋の運用開始後の2023年にサービスの開始をする準備で進めているという話もあり、思った以上にオンライン指導のマーケットは早い広がりを見せるのではないでしょうか。

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