全米の診療データベースを用いた研究から、2010年に米国で提供されている医療の約5割を救急医療が占めていたことが明らかになった。研究を実施した米メリーランド大学医学部救急医学准教授のDavid Marcozzi 氏は「現在の米国の医療システムにおいて、救急科が重要な役割を担っていることが浮き彫りになった」としている。詳細は「International Journal of Health Services」10月17日オンライン版に掲載された。
Marcozzi 氏らは今回、全米を網羅した複数の病院診療データベースを用い、1996~2010年のデータを分析した。その結果、14年間の一般外来、入院、救急科を合わせた受診件数は35億件超で、この間に救急科の受診件数が約44%増加していたことが分かった。また、2010年の受診件数は一般外来が1億100万件、入院が3,900万件であったのに対し、救急科は約1億3,000件と全体の約5割を占めていた。
さらに、救急科を受診する患者を人種別にみると、黒人の割合が最も高かった。2010年には黒人が利用した医療サービスの54%を救急医療が占めていた。この割合は都市部の黒人では59%とより高かった。
このほか、メディケア(高齢者向け公的保険)およびメディケイド(低所得者向け公的保険)の加入者も、救急科の受診率が高かった。また全体の医療に占める救急医療の割合は北東部(39%)に比べて南部で54%、西部で56%と高く、地域差も認められた。
Marcozzi 氏は「この研究結果には愕然としたが、米国医療の現状について理解する手掛かりが得られた」と話し、特に黒人や公的保険の加入者で救急科の受診率が高いことについて「こうした社会的弱者で救急医療を利用する人が多いのは、医療アクセスの格差に起因しているのではないか」との考えを示している。
(HealthDay News 2017年11月3日)