手洗いをするとき、細菌を殺すために火傷しそうな熱い湯を使う必要はなく、手指の衛生には水温よりも十分な時間をかけることの方が重要だと分かった。この結果は、食品を扱う施設に対して手洗いに38℃の水を使うように推奨する米国食品医薬品局(FDA)のガイドラインとは相反するもの。
研究を実施した米ラトガース大学(ニュージャージー)のDonald Schaffner氏らは、「快適に手を洗えるようにすることは必要だが、有効性に関する限りでは、水温は問題でないことが示された。冷水を使用すれば温水よりも光熱費を節約できる」と話している。
今回の研究では、ボランティア20人を対象に6カ月で数回の試験を実施。対象者の手を高濃度の無害な細菌で汚染させた後、15℃、25℃、38℃の水で手を洗ってもらった。
その結果、有害な細菌などを取り除く効果は冷水でも温水と同程度だった。水温よりも、十分な時間をかけて石鹸で手洗いすることの方が重要であり、10秒以上手を洗えば著明に細菌を除去できることが分かった。石鹸の使用量は結果に影響しなかった。ただし、同氏らは「細菌を除去するのに最適な石鹸の量や種類を正確に決定するためには追加研究が必要」としている。
Schaffner氏は、「この知見は食品サービス業界に対するFDAのガイドラインに変更を迫るものだ。温度要件を定めるのではなく、快適な水温にすべきだとするだけでよい。不必要に水を熱するのはエネルギーの無駄となる」と述べている。
研究結果は、「Journal of Food Protection」6月号に掲載された。
(HealthDay News 2017年6月1日)