失業すると脳卒中による死亡リスクが高まる可能性があることが、大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学客員准教授のEhab Eshaks氏らの研究で示唆された。
同氏らは、40~59歳の日本人約4万2,000人(男性約2万2,000人、女性2万人)を対象に、雇用状態の変化が脳卒中リスクに及ぼす長期的な影響を分析した。1990~1993年から15年間の追跡期間中に1,400件超の脳梗塞または出血性脳卒中が発生し、そのうち400件超が死亡に至っていた。
解析の結果、継続的に就業していた対象者に比べて、失業したことのある対象者では脳卒中リスクが高いことが分かった。男性が失業すると、脳卒中を発症するリスクは1.58倍、脳卒中による死亡リスクは2.22倍に上昇した。女性でも同様に、失業すると脳卒中の発症リスクは1.51倍、死亡リスクは2.48倍に上昇した。
また、再就職した男性では脳卒中リスクがさらに高まり、脳卒中の発症リスクは2.96倍、死亡リスクは4.21倍にも上っていた。一方、再就職した女性では、これらのリスクはほとんど上昇していないことが分かった。
ただし、今回の研究では自己都合による退職と人員整理や解雇による退職を区別しておらず、失業と脳卒中リスクの因果関係も示していない。
Eshak氏は、「雇用の安定が脳卒中リスクの低減につながる可能性がある。日本では米国と異なり、労働者は“終身雇用制度”に組み込まれており、男性は安定した仕事に専念する傾向がみられる。失業した場合、通常は再就職すると地位が下がる」と説明。再就職した男性では雇用が不安定になり、新しい職を維持するプレッシャーを感じ、体調不良で休んだり病院に行ったりするのを躊躇する可能性があると述べている。
研究の詳細は「Stroke」4月号に掲載された。
(HealthDay News 2017年4月13日)