辛い物を好む人は好まない人と比べて1日当たりの食塩摂取量が少なく、血圧も低いことが中国人を対象とした研究で明らかになった。研究を実施した中国人民解放軍第三軍医大学大坪医院高血圧・代謝疾患センター(中国)のZhiming Zhu氏らは「減塩や血圧を低下させるための介入として、辛い物の摂取を促進することが有効である可能性がある」としている。研究の詳細は「Hypertension」12月号に掲載された。
食塩の摂取過多は高血圧のリスク因子であり、心血管イベントのリスクを高めることは良く知られている。このため、有効な減塩方法を明らかにするために数多くの研究が実施されてきた。
その中に、唐辛子に含まれている辛み成分であるカプサイシンに塩味を強く感じやすくさせる作用があることを示した研究があった。Zhu氏らはこの研究報告に着目し、辛い物を食べることで食塩の摂取量が減少するのかどうかを検証するために中国人の成人606人を対象とした研究を実施した。
対象者の辛味に対する好みのレベルを「好む」「普通」「好まない」の三段階に分けて解析した結果、辛い物を好まない群と比べて好む群では収縮期血圧が8mmHg、拡張期血圧が5mmHg低く、1日当たりの食塩摂取量も2.5mg少なかった。
また、対象者にカプサイシンを投与して脳画像検査を実施したところ、食塩を摂取した時に活性化する領域と同じ領域〔島皮質および眼窩前頭皮質(OFC)〕の活性化が認められた。このことから、Zhu氏らは「辛い物を食べることで塩味への欲求が減弱するのではないか」との見方を示している。
一方、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)循環器病予防医学のGregg Fonarow氏は「辛い食べ物をたくさん食べることが健康に良い影響を及ぼすのかどうかを見極めるためには、さらなる研究が必要だ」と慎重な見方を示している。
(HealthDay News 2017年10月31日)