セミナーレポートVol.13
薬局における ポリファーマシー対策と個別最適化による薬物療法の向上

セミナーレポートVol.13

薬局におけるポリファーマシー対策と個別最適化による薬物療法の向上

本レポートでは、2023年7月13日に開催されたオンラインセミナー「薬局におけるポリファーマシー対策と個別最適化による薬物療法の向上」の講演内容をダイジェストでご紹介いたします。

株式会社ユニケソフトウェアリサーチ
ノアメディカルシステム株式会社

概要

冒頭、橋場 元 氏は「調剤の概念とは、薬剤師が専門性を活かして、診断に基づいて指示された薬物療法を患者に対して個別最適化を行い実施すること」であると述べ、この言葉が示すとおり、本セミナーでは、個別最適化による薬物療法の向上について、医薬品の安全性情報、ポリファーマシーの側面からの解説が行われました。

個別最適化による薬物療法の向上

これまでの薬物療法は「薬剤評価中心型」であったが、今後は、個別最適化した「患者総合評価型」の薬剤師業務が求められると説明した。具体的には、これまでの「処方確認中心型」の業務から、患者にとって最適な処方の提案を行う「処方提案型」に切り替えていくことが求められる。そして、個別最適化した薬剤師業務を行うためには、患者の基本情報と合わせて心理情報(患者の意見や希望、変化する心理・心情、生活環境など)や医薬品の情報(ゲノム解析による医薬品への感受性の情報なども含む)を掛け合わせることが必要であると述べた。

個別最適化を行うための重要なツールである医薬品の安全性情報

続いて橋場氏は、医薬品の安全性情報が個別最適化を行うために重要なツールの1つであると述べ、PMDAが行った調査結果を示しながら薬局の現状を解説した。 まず、医療用医薬品の安全性情報を薬局内で共有する手順(*1)や、地域の医療機関など他施設への情報伝達方法の手順(*2)について、実際に作成している薬局は少ないことを示した。地域への医薬品に関する情報提供実績は、地域連携薬局の要件にも含まれており、これから薬局としては重要視するように求めた。

さらにRMP(Risk Management Plan:医薬品リスク管理計画)、重篤副作用疾患別対応マニュアルについても理解している薬剤師が少ない現状を共有した。RMPはPMDA作成の「3分でわかる!RMP講座」や動画を参考に理解して、新薬取り扱い開始時にリスクの把握をする際などに活用するよう述べた。

医薬品等の安全性に関する重要な情報を、タイムリーに配信する「PMDAメディナビ」についても、登録と活用を促した。そして、医薬品の安全性情報に関わる上記の内容を薬局の全スタッフへ周知するよう呼びかけた。

続いて、医薬品・医療機器等安全性情報報告制度について、薬局開設者や薬剤師は厚生労働大臣への副作用報告が義務付けられているが、医療機関からの報告数がメーカーからの報告数に比べて圧倒的に少ないことを示した。PMDAの報告受付サイトもオンライン化され、医療機関からの安全性に関する報告は重要視されている。また現段階では、薬歴は個人の個別最適化のための情報として使われてはいるが、今後薬歴の情報をPMDAに報告するシステムが整い、情報数が増加すると、「全国民の個別最適化のための情報」にバージョンアップできるのではと期待を述べた。

個別最適化の1つであるポリファーマシー対策

ポリファーマシーとは、多剤服用の中でも害をなすものを指すと定義されており、6剤以上になると有害事象の頻度は増加し、高齢になるほど薬剤数は増えるというデータを示した。

ポリファーマシーが形成される例として、複数の医療機関から処方を受ける場合と、処方カスケード(薬の副作用が現れ、それに対する薬が他の医療機関から処方される)が発生する場合の2つを挙げた。そしてポリファーマシー解消のためには、かかりつけ医による薬剤処方状況の把握や、薬局による調剤と医薬品情報の一元管理が有用であると説明した。 さらにポリファーマシーは服薬アドヒアランスの低下にもつながるという。薬局はアドヒアランス向上のために調剤の工夫や剤形の選択などを行うことできるが、前提として処方・調剤の一元管理が最も大切であると述べた。

まとめ

橋場氏は、個別最適化による患者のためになる薬剤師サービスを提供するために、医薬品安全に関する情報を薬局内や地域で共有すること、国が発信している情報を入手し理解すること、ポリファーマシー対策を地域で協力して取り組んでいくことが重要であると述べた。そして、薬と向き合う・患者と向き合う・地域と向き合うの3点を考えて日頃の業務に取り組んで欲しいと述べ、セミナーを締め括った。

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